2019/02/06 21:35



クルド人兄妹がスタートさせたスウェーデンベースのブランドとして益々注目を集め、"ポスト ラフシモンズ" "ポスト ミウッチャプラダ"とも言われるNAMACHEKO ( ナマチェコ )。


NAMACHEKOのデザイナー2人の生い立ちとともに、ブランドの成り立ちから今に至るまで、改めてNAMACHEKOについてまとめてみた。









・デザイナー2人の生い立ち、ブランドが始まるまで




兄妹のDilan LurrとLezan Lurrはイラク・バグダードの北方にあるキルクークでクルド人として生まれ幼少期を過ごし、8歳と4歳の時に両親とともにスウェーデンに移住。

スウェーデンの大学では、ともにファッションとは関係のないシヴィル・エンジニアリング(水道や道路建築などのインフラに関する土木工学) を学ぶ傍ら、ドキュメンタリースタイルの写真やパターンメイキングを独学する。

在学中に自身の故郷でもあるクルド地域で撮影したフォトブックを制作し、そこでは、アートから着想を得た多くのリファレンスとクルド民族のアイデンティティを表現。フォトブックを製作する上、衣装を作ることになり生地はフランスの有名メゾンが用いる高級生地を生産する工場から余り布を仕入れ、クチュール用のシルク生地などを使いながらも普段着として着られるもの約35着を本格的に制作した。

その撮影のために作った洋服をThe Broken Armが目にし、2017-18年秋冬コレクションとして買い付けた事がブランドスタートのきっかけとなる。当時2人とも学生であった。






彼の才能は瞬く間に各方面から注目を集め、シャネルやドリス ヴァン ノッテンなど数多くのメゾンブランドの生産を請け負う世界トップレベルのアントワープの工場 GYSEMANS CLOTHING INDUSTRYの目に留まり生産面でのサポートを受けることとなる。同工場は初期のラフシモンズやクリスヴァンアッシュの生産を請け負っていた事でも有名だ。また、PRは世界トップのプレス会社である"PR CONSULTING"がサポートする事となった。



各方面からのサポートを受けるも経営面でのサポートがあった訳ではない。18年春夏の制作期間に至るまで十分な予算がなく、Dilanは制作費を得るためコペンハーゲンのレストランでフルタイムで働きながら制作に励んでいた。






・NAMACHEKOがスタートしてから


学生時代の製作を1シーズン目とカウントすると、今期のSS19で4シーズン目を迎える。兄のDilanが主にデザインを手がけ、妹のLezanが主に経営面やセールス面を担当する。


ブランド名の考案はルワンダのニヤマシェケ地域に “ナマチョコ”と呼ばれるコーヒー農園がありDilanがチョイス。Lezanの提案により少し変えて“ナマチェコ”とした。語感が良く、意味をもたない言葉を敢えて選んだ。 


現在アトリエはベルギーに構え、プレスルームはパリ、両親が暮らすスウェーデン、一部の商品生産地でもあるイタリアなど、常にヨーロッパ中を移動する。


また、ラフシモンズに所属していたヘッドパタンナーが加わったことで“ポスト ラフシモンズ”との呼び声も高まる。
 


伝統を重んじながら制限のあるイラクの文化と、個々の自由な独創性を重視するスウェーデンの文化は両極端とも言え、彼らが成長していく中で多くの多角的概念をもたらした。


「二面性」と「文化的アイデンティティ」はNAMACHEKOを表現する強く揺るがないコアとして、シンプルでありながらも独創性を追求したディテールに落とし込まれ表現されている。




彼らの両親について触れる。

父親はジュエリーショップを経営していた過去を持つ。父親たちがスーツを着てお店に立っていた姿が印象に残り、テーラリングに興味を持つきっかけとなった。実際に秋冬18のコレクションではジュエリーのチェーン製作を通して彼らをバックアップした。







母親は数学教師であった。彼らの故郷、イラクにおいて数学とアートは密接な関係にあり、幼少期に母から学んだ幾何学もまた、彼らのコレクションと密接な関係を持つ。今季19SSコレクションで重用されたひし形模様がそれだ。



2019年春夏コレクションは、Dilanが生まれてから9歳まで過ごしたクルド地域での少年時代がテーマ。無邪気で自由奔放に遊んだ当時の記憶を思い起こし、明るいカラーを重用した。








"どこにも所属せず時代も関係ないようなコレクションを作り、20年後も着ることができ、20年後にもその時代の顔をする服を作りたい"とデザイナーは語る。



また、NAMACHEKOを語る上でESPACE NIEMEYER ( エスパス ニーマイヤー ) とKVADRAT (クヴァドラ)についても外せないポイントだ。



ESPACE NIEMEYERは、建築家 OSCAR NIEMEYERの作品であり、歴史的建造物であるこの会場ではMARTIN MARGIELAやTHOM BROWNEなどの限られたメゾンのみがショーを行える会場であり、NAMACHEKOも同会場を使用する。


///ESPACE NIEMEYER


彼らのショールームは同建築物の地下に位置し、彼らのブランドイメージにとって重要な役割を果たしている。




また、会場の建築仕様と呼応するように使用するファブリックはKVADRAT社のもの。KVADRATはヨーロッパを代表するテキスタイルメーカーであり、その布地は主にラグジュアリーなインテリアに用いられる。ソファや椅子に使用される家具生地は元々何十年も永く継続的に使用される事を目的として作られているため、布地自体に10年保証がされるほど強度ある素材だ。NAMACHEKOは毎シーズン、メインピースにてKVADRATの素材をオフィシャルで採用。


また、エルメスが所有するロワールの生地メーカーBUCOL社の生地も採用し、NAMACHEKOのみで使用が許させるエクスクルーシブな素材を展開する。




高級素材をふんだんに使用し、生産は超一流の工場で行い納得のいくクオリティまでとことんこだわり、厳選されたショップのみで展開される。大きいブランドは1型だけでTシャツ500枚、シューズを300足と多く作るが、NAMACHEKOは18AWを例に挙げると全商品合計で800ピースしか生産していない。各商品に割り振ると各品番の生産数は極少数であり、ロット数が極端に少ない事は明白だ。
その上、毎シーズンランウェイを行い、トップクラスのPR会社が担当しブランディングにもこだわる。全てが一流と言える。NAMACHEKOの商品がハイプライスなのにも合点が行く。



今ではファッション業界においてNAMACHEKOはホットワードであり誰もがコレクションに注目し、関心を示さずにはいられないブランドとなった。数々のブランドに影響を与え、彼ら自身がデザインソースにすらなっているとも言える。


クリエーションや才能を評価し、支えていくこと。デザイナーのクリエーション、本質をしっかりと見定めてNAMACHEKOのような本物のブランドと関わっていきたいと願う。